人材の流動性を高めるために解雇規制は緩めるべき

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日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」という長大なエントリがあります。これはもう社会科学の論文と言ったほうがいいほどで、いろいろな論拠を交えて日本の解雇規制を撤廃せよという結論を導いています。私はこの意見に賛成です。

雇用者が整理解雇をするのに高いハードルがあるということは、弱い個人の味方のように見えますが、色々考えてみると実は解雇規制があることがむしろ社会的に弱い立場の人を更に弱くしていると考えられます。つまり、一見すると厳しい意見を言っているように見える人は弱い人の味方で、弱い人に寄り添うようなことを言っている人たちは逆に弱い人の敵ということです。しかし立場の弱い人は今の状況をよい方向に変えてくれるかもしれない改革者に対しては文句をいい、逆に甘言を弄するポピュリストを支持する傾向にあります。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉は何百年も前からあるそうです。

解雇規制を緩めたほうがいい理由は色々あります。一つは人材派遣業でしょうか。派遣で月に20万円を得ている労働者がいるとします。派遣先の企業はこの人を雇うのに、派遣会社のピンはね率にもよりますが40万円以上を派遣会社に払っています。働く側にとっては月給20万円で非正規だしそんなに働くインセンティブはないし、雇用者側から見ると40万円も払っているのだから見合った成果を期待するでしょう。ミスマッチです。誰が得をするかというと主に派遣会社です。派遣を通さないと人が集まらないとか若干の派遣会社を支持する理由はありますが、労使双方にとっていいことがない制度がこれだけ多く使われているのは解雇規制があるからという面も大きいはずです。解雇規制が緩めば直接雇用が増えると期待されます。

他にも、業績の悪いA社ではたくさんの人材を抱えていて毎年赤字を垂れ流しています。業績のいいB社は人手が足りません。A社は経営難で人を減らしたいと思うかも知れませんが、解雇規制があるため倒産に瀕するまで人員整理ができません。JALなどの例を見ると倒産しても解雇に大きなハードルがある場合すらあります。B社にとっても現状では人手不足でも何十年も先までずっと好調でいられる保証もなく、安易に人を増やすことはできません。もし人材の流動化が進めば本来は稼ぐ力のあるA社の社員がB社に移動することで国家全体にとってプラスになるはずです。国家財政が改善すれば、他の諸問題も経済的な問題を根っこにしているものは解決に向かうでしょう。雑な言い方をすれば解雇規制を緩めれば日本の抱える諸問題の多くは解決するでしょう。

しかし解雇規制を緩めたらすぐに効果が現れるわけでもないでしょう。経営不振の会社で多くの人員整理がなされる一方で、職を失った人が再雇用されるかは不透明です。解雇規制を緩めた直後はまだその感覚に不慣れであるため、企業がすぐに積極的に人を採用するようにはならないでしょうから、そのつなぎの10年くらいは不安定な時代になると思います。そのため、単に解雇規制を緩めるだけではなく、同時にセーフティネットの拡充を図る必要があります。

なんでも1995年から2015年までの20年で世界の先進国ではGDPが2〜3倍になったそうですが、日本はほとんど変化がありません。つまり相対的に日本はかなり貧しくなった20年というわけです。昔は世界に占めるGDPが17%あった日本ですが、今では2%程度だそうです。失われた20年の原因は色々あり、一般にバブル崩壊とそれによる不景気・デフレによるものとされていますが、もし人材の流動化が確保されていれば業績の悪い会社に優秀な人材が拘束されることもなく早期に景気は回復したかも知れません。

というわけで、日本経済を再び飛躍させるためのシンプルな解決策としては、セーフティネットを確保しつつ解雇規制を少しずつ緩めることを勝手に提案します。あと珍説の1つとしてリク○ートやその同業者を取り締まることを提案しておきます。なんでも「就活」という言葉は1990年頃にはなかったようだし、リクスーもエントリーシートもなかったそうです。これらの会社は、一度雇用すると40年責任を負わなければならない会社の弱みにつけ込み就活と言われる一連の奇妙な習慣を導入しました。他人の人生に対して、人生を棒に振るかもしれないという無言の圧力を加えて金儲けを目論んだわけです。それによって大学生の求職に関する考え方は画一化しました。企業は人で成り立っていますから、その採用をいじることでだめにすることもできるのです。